2017.11.12

言葉のなかの音




シューベルト「楽興の時」は6つの小品で成っています。
ふとしたインスピレーションから生まれたと思われる一筆書きのような小品たちです。

「楽興の時」と「ペンキや」は、それぞれの軸をもつ、まったく別の作品で
今回わたしは初め、たんたんと回るふたつの歯車といった演目をめざしました。
でも、演ってみると、自然と音は、言葉によって表されているものになろうとします。
言葉なしで音が1曲通すときでさえ、ソロのときとは異なる、言葉のなかの音としての「楽興の時」になるのを感じます。

そして、「楽興の時」と「ペンキや」は共振もしています。
「ペンキや」のしんやの、ちょっとした才能と、それによって定められていく人生の流れは、シューベルトの、音楽の神様にとりつかれてマグマのように作品を生み出し夭逝する運命とそっと符合します。ひやっとするような空気が、ふたつの作品には共通して漂っています。

(2017年11月26日のコンサートの演目のひとつ "シューベルト「楽興の時」の断片による梨木香歩「ペンキや」" に寄せて書いたものから)




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